扇形おうぎがた)” の例文
「俺は痣の熊吉の押し込んだ家というのを、江戸の絵図面に印を付けてみたが、不思議な事に本郷を真ん中にして扇形おうぎがたに拡がっている」
銭形平次捕物控:124 唖娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
と見れば、蛇形の列は忽然こつねんと二つに折れ、まえとは打ってかわって一みだれず、扇形おうぎがたになってジリジリと野武士の隊伍たいごを遠巻きに抱いてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
扇形おうぎがたをしたその半ぺらを持っている者があったら、それはヘザ某の遺族か部下に関係ある者だ——と春木少年は思った。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それから黄金きん色の熔岩ようがんがきらきらきらと流れ出して見る間にずっと扇形おうぎがたにひろがりました。見ていたものは
それが扇形おうぎがたに拡がったり、泡が打衝ぶつかって、白い皮膚のようにスウッと滑らかになると、縞に曲線に、乱れ入り組んで、っとするような交錯が起り、また砕け散って
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
五角、扇形おうぎがた軍配ぐんばい与勘平よかんぺい印絆纒しるしばんてんさかずき蝙蝠こうもりたことんび烏賊いかやっこ福助ふくすけ瓢箪ひょうたん、切抜き……。
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
もし頭目の部屋に、頭目が猫女にとられた、扇形おうぎがたの方の半ぺらの写真を持っているなら、それを手に入れたいと思った。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
どろどろと立ち乱れると、無言のうちに整然と、それへ来て腰かけた三名をかなめにして、扇形おうぎがたに坐り流れる。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頭上はるか扇形おうぎがたに集束されている穹窿きゅうりゅうの辺にまで達していた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
今、四馬が指の先につまんで見せたのは、半分より小さいもので扇形おうぎがたをしている。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)