したわ)” の例文
立去りあえずたたずむのがならいであったが、恋しさもしたわしさも、ただ青海あおうみの空の雲の形を見るように漠然とした、幻に過ぎなかった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから彼は、したわしい偉人の腕に抱かれてる身を非常に幸福に感じて、この上もなく幸福に感じて、はらはらと涙をこぼした。ハスレルはその率直な愛情に心を打たれた。
せめて時計だけはきんのに代えよなどともいわれるけれども、この銀時計は子供のときから持ったしたわしい記念物だから、これを離すわけにはゆかぬ、もっとも二、三ヵ月前に自動車を買ったので
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
惚れたと云うのが不躾ぶしつけであるなら、可懐なつかしいんです、ゆかしいんだ、したわしいんです。……私に一人の姉がある。姉は人のめかけだった。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)