惰眠だみん)” の例文
「渡らん、渡らん、大江の水、のぼらん、溯らん、千里の江水こうすい。——青春何ぞ、客園の小池に飼われて蛙魚泥貝あぎょでいばいの徒と共に、惰眠だみんをむさぼらんや」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
我が作れる狭き獄室に惰眠だみんむさぼ徒輩とはいは、ここにおいて狼狽ろうばいし、奮激ふんげきし、あらん限りの手段をもって、血眼ちまなこになって、我が勇敢なる侵略者を迫害する。
初めて見たる小樽 (新字新仮名) / 石川啄木(著)
以上は新型式の勃興ぼっこう惰眠だみんをさまされた懶翁らんおうのいまださめ切らぬ目をこすりながらの感想を直写したままである。あえて読者の叱正しっせいを祈る次第である。
俳句の型式とその進化 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ちっとも、惰眠だみんの隙を与えないものだから、女は、むっくりと起き上りました。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
とかくは時勢転換の時節到来と存じ候男女を問わず青年輩の惰眠だみん
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
もうやがて五十に近い体を、山支度に厳しく固め、手には寒竹のむちを持って出かけ、工事場で彼のことばに渋る者があったり、惰眠だみんぬすむ者があると
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それがなぜか、長い惰眠だみんにでも溺れていた気がする。まるで長夜ちょうやの夢から醒めたような今日の空ではあるよ。もう、あのような大酒は以後きっと慎もう」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父の惰眠だみんを醒ますように、裏の方では、長男の主税ちからと次男の吉千代とが、剣道の稽古をはげんでいるらしい。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この老猪ろうちょめ、なにをいうか。良民の膏血こうけつをなめ喰って脂ぶとりとなっている惰眠だみんの賊を、栄耀えいようの巣窟から追い出しにきた我が軍勢である。——眼をさまして、く古城を献じてしまえ」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
惰眠だみんの耳もとへ鐘をつかれたように、人々は、範宴を嫉妬した。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)