惆悵ちゅうちょう)” の例文
歳月人をたず、匆々そうそうとして過ぎ去ることは誠に東坡とうばが言うが如く、「惆悵ちゅうちょうす東欄一樹の雪。人生看るを得るは幾清明いくせいめいぞ。」
十九の秋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
玄徳は、落胆して、いかにも力を失ったように、惆悵ちゅうちょう久しゅうして、なおたたずんでいたが、そう聞くと、そばから張飛が
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで翁はやむを得ず、この荒れ果てた家のどこかに、蔵している名画を想いながら、惆悵ちゅうちょうひとり帰って来ました。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
夏の日光の殊更明く照渡っているのを打眺め、何という訳もなく唯惆悵ちゅうちょうとして去るに忍びざるが如くいつまでもたたずんでいた。
とし両番りょうばんを経て相謁あいえっしてわず、空しくかえっては惆悵ちゅうちょう怏々おうおうとして云うべからざるものあり。切におもう、備や漢室の苗裔びょうえいに生れかたじけなくも皇叔に居、みだりに典郡の階に当り、職将軍の列にかかわる。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分もう一度そういう程度まで立戻る事が出来たとしたら、どんなに万々歳なお目出度めでたかりける次第であろう……。惆悵ちゅうちょうとしてさかずきを傾くる事二度ふたた三度みたび。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
わたしは富士の眺望よりしてたまたま蘇山人が留別の一句を想い惆悵ちゅうちょうとしてその人をおもうてまない。
惆悵東欄一樹雪 惆悵ちゅうちょうす 東欄一樹とうらんいちじゅの雪
十九の秋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)