情婦いろおんな)” の例文
身ぎれいにしてるが、一方では情婦いろおんなをこしらえて、手鼻をかむ馬方でさえ眉をしかむるような、肥料溜こえだめ塵溜ちりだめを心の底に持っている。
「あなた様にはまだこのわたしが陣十郎の寵女おもいもの、陣十郎の情婦いろおんな、それゆえ心許されぬと、お思い遊ばして居られますのね」
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お銀は田舎へ流れ込んで行っている叔父のもと情婦いろおんなのことを想い出しながら、どうかすると、おりへ入れられたような、ここの家から放たれて行きたいような心持もしていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そうすると、向うから、小さな女異人が一人歩いて来て、その人にかじりつくんです。弁士の話じゃ、これがその人の情婦いろおんななんですとさ。年をとっている癖に、大きな鳥の羽根なんぞを
片恋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
今見りゃ、ここを出た客てえのは、榎邸の奥様おくさんで、その馬丁の情婦いろおんなだ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何でもございません。徳三郎の情婦いろおんなは、丹頂のお鶴の妹のお勢だったのでございます。お勢にしては、この平次が憎くて憎くてしようがありません。徳三郎の伝三郎をそそのかしてはいろいろ細工を
「何、島君じゃと? 嘘を云うな。こんな深夜よふけにこんな所に、何んで島君がいるものか」云い云いじっとかして見たが、「やっ、こいつ本物だ。右衛門の情婦いろおんなの島君じゃ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼だって昔は、おもしろいことをやって、情婦いろおんなをこしらえ、小娘をひっかけ、幾人ものコゼットを持っていたんだ。お化粧をし、翼をつけ、春のパンを食ったことがあるんだ。