悠々ゆるゆる)” の例文
「今日は、お父君のおいいつけを奉じ、垂井の駅までお迎えに参られておられまする。後刻、お宿において悠々ゆるゆるお話し下されませ」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
悠々ゆるゆるしていた方が病人のためになると思った時は、わざと悠々したりなどするのが例でありました。
別荘の番人がとりあえず私を奥へ案内して、「あなたが御出おいでの事はすで主人しゅじんの方から沙汰がございました、つきましてはの通りの田舎でございますが、悠々ゆるゆる御逗留なすって下さいまし」
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
卓子に肱をつき、ぼんやりしていた彼は、悠々ゆるゆる立って居間に入って仕舞った。
或る日 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
そこで私は天鬼から師のおかたみを受けることになっているので、それまでは近畿のあたりを悠々ゆるゆると、修行がてら見物して歩こうと思っているのです
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「仰っしゃる通りでもあり、そうでもない用件も少し帯びて参ったので。まあ春のこと、一杯やりながら悠々ゆるゆるとそのお話をいたしたいと思ってな……」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
良人うちのひとも、えろう酔うたし、旅づかれもあろうほどに、あしたの朝は寝坊するというておりますでの、あなたも悠々ゆるゆると眠って、朝立ちには、暖かい御飯など食べて行きなされ」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ここにいては、まったく、世上の事は何も分りません。こよいは悠々ゆるゆる、都の近状など、伺わせてください。……ま、湯浴ゆあみなどなされて、何の馳走もありませんが、おくつろぎの上で」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ただ今、鬼小島どのを、これへ呼んで参りますから、悠々ゆるゆるおはなしを」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……ただ五郎信盛、一昨日の防戦に、見るとおり片脚に深傷ふかでを負い、進退もままならぬゆえ、まず、各〻が最後のいくさを見とどけた後、悠々ゆるゆると、ここに敵を待ちうけて存分合戦の後まいるぞ。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何の設けもございませぬが、こよいは悠々ゆるゆると、おくつろぎの程を」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おそれ入りました。——では、悠々ゆるゆる、お支度を遊ばして」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ついては、永々の籠城ろうじょう、さだめし御辛苦の事もおわしつらんと、主人秀吉様より心ばかりの品お慰めにと、これへ持参いたしてござる。……まだなかなか陽も高うござれば、われらの役儀にお心づかいなく、悠々ゆるゆると名残を
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「後で悠々ゆるゆる伺おう。——何よりもお詫びせねばならぬ事は、去年、ことしの春と、二度までも、令旨りょうじのお沙汰と共に、佐殿の召状にも接しながら、何のご返事もかえさなかったわれらの無礼のかどです。……お察しください」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)