恩賜おんし)” の例文
恩賜おんしの銀時計を拝受すべき当の本人の正木医学士が、いつの間にか行衛ゆくえ不明になっている事が発見されまして、又も、人々を驚かしました
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
士官学校を卒業する時には、恩賜おんしの軍刀を頂いた秀才で、殊に語学は天才的だった。支那しな語や、マレー語や、スペイン語なども自由に話すことが出来た。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
抱えていた恩賜おんしの御衣と玉帯を、あわてて、たもとでおおいかくしながら、苑門えんもんのかたわらに身を避けていた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
泰然たいぜんとしてその机を階下に投じ、た自個の所有にかかる書籍、調具を顧りみず、藩主恩賜おんしの『孫子そんし』さえも焼燼しょうじんに帰せしめ、一意いちい以て寓家ぐうか什器じゅうきを救わんとせり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
そう思うほどこの閑地は広々としているのである。私たちはやむをえず閑地の一角に恩賜おんし財団済生会さいせいかいとやらいう札を下げた門口もんぐちを見付けて、用事あり気に其処そこから構内かまえうちへ這入って見た。
いいかえれば、この恩賜おんしがさらに正成の運命を絶対の極地へおいてしまったといっていい。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「とんでもないことです。ほかならぬ恩賜おんしの品。差上げるわけにはゆきません」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちかごろ彼の家中風俗を町でも“伯耆様ほうきよう”と呼んでいるほど、いつのまにか都振りにんで、恩賜おんしの“帆掛ほかもん”を、旗、道具、衣裳につけ、その行装の華奢かしゃなこと、たれにも負けない風だった。
恩賜おんしほうを刀のさきで受けるとは」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)