恋着れんちゃく)” の例文
小柴は秘書をして長くお屋敷に出入して居る内に、——御本人のいらっしゃる前で申しては何んですが、——お嬢様へ恋着れんちゃくしたのです。
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
この間などは「其後そのご別に恋着れんちゃくせる婦人も無之これなく、いずかたより艶書えんしょも参らず、ず無事に消光まかり在りそろ間、乍憚はばかりながら御休心可被下候くださるべくそろ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私としては非常に云いにくいことではあるが、彼は私に対して常人には一寸想像も出来ない程強い恋着れんちゃくを感じているらしかった。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あのお筆さんという人は上林君によほど恋着れんちゃくしていたようです。お嬢さんも上林君を慕っていたようでした。
有喜世新聞の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
勘定をして見ると往来を通る婦人の七割弱には恋着れんちゃくするという事が諷刺的ふうしてきに書いてあったのを見て、これは真理だと感心したくらいな男である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「寒月が何かその御令嬢に恋着れんちゃくしたというような事でもありますか」あるなら云って見ろと云う権幕けんまくで主人はり返る。「まあ、そんな見当けんとうでしょうね」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)