性懲しやうこ)” の例文
結婚といふものは、不思議なもので、一度で霊魂たましひまで黒焦くろこげにしてこり/\するのもあれば、性懲しやうこりもなく幾度いくたびか相手をへて平気でゐるのもある。
その翌朝、また水天宮前から電車に乘り、竹川町で下りて、性懲しやうこりもなくまた行つて見ると幸ひに加集はゐたが、義雄を見て不安さうな顏つきをした。
明神下に日參をして、平次に冷かされながらも、性懲しやうこりもなく御披露に及ぶ、數限りもない世間話のうちに、かの百壽園の事件があつたところで、何んの不思議もありません。
私はさうした深刻な侮辱を感じながら、抽籤ちうせんにはづれてもなほ性懲しやうこりもなく、怨霊をんりやうかれたばちあたりのやうにその日その日の国民酒場を西へ東へと追つかけまはつたものである。
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
私は彼女の鏡台を足蹴あしげにして踏折つた、針箱を庭に叩きつけた、一度他家に持つて行つたものを知らん顔して携へて来るなど失敬だと怒つて。さうして性懲しやうこりのない痴情喧嘩に数多あまたの歳月をおくつた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)