思出おもひいだ)” の例文
二つ有るものの善きを捨て、あしきを取り候て、好んで箇様かようの悲き身の上に相成候は、よくよく私に定り候運と、思出おもひいだし候てはあきらめ居り申候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さればとして、終生しふせいわするゝこと出來できぬのは、この權現臺ごんげんだい遺跡ゐせきで、其所そことき勿論もちろん遺物ゐぶつ一片ひとひらにしても、ぐと其當時そのとうじ思出おもひいだすのである。
彼の病はいまだ快からぬにや、薄仮粧うすげしやうしたる顔色も散りたるはなびらのやうに衰へて、足のはこびたゆげに、ともすればかしらるるを、思出おもひいだしては努めて梢をながむるなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)