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おもひいだ
二つ有るものの善きを捨て、
悪きを取り候て、好んで
箇様の悲き身の上に相成候は、よくよく私に定り候運と、
思出し候ては
諦め居り申候。
されば
余として、
終生忘るゝ
事の
出來ぬのは、この
權現臺の
遺跡で、
其所の
地を
踏む
時は
勿論、
遺物の
一片を
手にしても、
直ぐと
其當時を
思出すのである。
彼の病は
未だ快からぬにや、
薄仮粧したる顔色も散りたる
葩のやうに衰へて、足の
運も
怠げに、
動すれば
頭の
低るるを、
思出しては努めて梢を
眺むるなりけり。