こお)” の例文
君香は、「この街が、なんや、こおうなった」といい、あどけない無心の百合香に頬ずりしながら、ぽろぽろと涙を流した。そして
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「さようでござりましょうとも——立派なお武家が、役者風情をお連れなさるのに、よほどこおうのうては、これ程のお支度はなされますまい」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「だって……あの血だらけな恰好をしてあの蒲団の上に坐っていたんですもん。淋しそうな顔をして……真っ青な顔をして! わたしこおうて、もうどうもならん」
蒲団 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「義一さん、船の出るのもが無さそうですからどうか此女これ……わたしの乳母ですの……の手を引いておろしてやってくださいましな。すべりでもするとこおうござんすから」
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「腹が出来んといくさも出来ん。」僕等のこおなった時に、却って平気なもんであった。軍曹が上官にしかられた時のうわつき方とは丸でちごてた。気狂いは違たもんやて、はたから僕は思た。
戦話 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
「死ぬのはこおうござります。死ぬほど、恐ろしい事はありませぬ」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どんなお方もこおうはない——わしは、大ごえで、今どき世にはばかる、えらい権威を持たれた人も、昔はこれこれの悪事に一味して、罪ない町人を、浅間しい目にあわせた——今の栄華も
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)