忍草しのぶぐさ)” の例文
そのうちに或る深山の谷間を通ったら福岡地方で珍重する忍草しのぶぐさが、左右の崖に夥しく密生しているのを発見したので、奈良原到が先ず足を止めた。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
こんな曲りかけた家などに配合すると藪からしの太い蔓も忍草しのぶぐさよりもはかない風情ふぜいが見えないでもない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
稽古の窓に向つて三諦止觀さんたいしくわんの月を樂める身も、一てう折りかへす花染はなぞめ幾年いくとせ行業かうげふを捨てし人、百夜もゝよしぢ端書はしがきにつれなき君を怨みわびて、亂れくるし忍草しのぶぐさの露と消えにし人
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
間拔けだなア、まだ岡つ引にこだはつてやがる——こいつはそんなイヤな本ぢやないよ。北村湖春こしゆんといふ人が書いて、近頃評判になつてゐる『源氏物語忍草しのぶぐさ』といふ日本一の好い男のことを
平次は讀み耽けつてゐる『源氏物語忍草しのぶぐさ』から顏をあげました。