心情こころ)” の例文
「さらば問うが、不犯ふぼんひじりたる僧正が、あのようななまめかしい恋歌を詠み出でたは、そも、どういう心情こころか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あわれむべきかなヨブ! 彼は神に攻められつつありと感じて、死ぬる前数日間なりと神がその手をゆるめ給わんことを乞うたのである。その心情こころまことに同情すべきでないか。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
おとなしいお雪が、胡弓を弾くのを、モルガンはじっと聴いている時があった。傷ついた心をともにむせび泣いてくれるような、胡弓のいとがお雪の心情こころのようにさえ思われて来たが
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
せっかく理性が築いたものを、君のそのぐにゃぐにゃなやくざな心情こころがぶっ毀してしまうんだ。僕が中学生時代に腸チフスをやった時、叔母さんが可哀そうだと言ってきのこの酢漬を喰わしてくれた。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わし達の心情こころでは、ゆるせない冷酷だ。世人一般に、骨肉の愛というものを疑わせよう。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
多門伝八郎という心ある武士は、自分の心情こころを見抜いて、吉良の容態を
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)