微暗ほのぐら)” の例文
微暗ほのぐらい火影は沈靜な……といふよりは停滞した空氣にたゞよツて、癈頽した家のボロを照らした。由三は近頃になく草臥れた兩足を投出して、ぐッたり机に凭れかゝツた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
庭は木の繁みで微暗ほのぐらく、池の水や植木の鉢などが月明りに光つてゐた。開放あけはなした座敷は暗かつたが、籐椅子とういすが取出されてあつたり、火の消えた盆燈籠ぼんどうろうが軒に下つてゐたりした。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
宵惑よいまどいの私は例の通り宵の口から寝て了って、いつ両親りょうしんしんに就いた事やら、一向知らなかったが、ふと目を覚すと、有明ありあけが枕元を朦朧ぼんやりと照して、四辺あたり微暗ほのぐら寂然しんとしている中で
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
雨でも降るとスッカリ雨戸を閉切しめきツて親子微暗ほのぐらなかに何がなしモゾクサしていじけ込むてゐる。天気の好い日でも格子戸の方の雨戸だけは閉切しめきツて、臺所口から出入してゐる。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)