御社おやしろ)” の例文
朝廷や京都の大きな御社おやしろにも、中世以前からこれとよく似た賭弓のりゆみ御式おしきがあって射手いては右左に分れて勝負を競うほかに、おのおの一方の声援者があり
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
笛吹は、こまかい薩摩さつま紺絣こんがすり単衣ひとえに、かりものの扱帯しごきをしめていたのが、博多はかたを取って、きちんと貝の口にしめ直し、横縁の障子を開いて、御社おやしろに。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
春日かすが御社おやしろに仕えて居りますある禰宜ねぎの一人娘で、とって九つになりますのが、そののち十日と経たない中に、ある夜母の膝を枕にしてうとうとと致して居りますと
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
何が何だか判らないが、いつまでも子供を相手にしてもいられないので、三人はそのまま其処を立ち去って、随身門をはいって御社おやしろに参詣、もとの宿屋へ帰って来ました。
半七捕物帳:68 二人女房 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すなわち一生を御社おやしろに捧げて、歌いつ舞いつする者となったり、もしくは水の精をむこもうけたとって、末にはするすると長い裳裾もすそいて、池沼ちしょうの底に入ってしまったり
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
村の中央には明神みょうじんさまの御社おやしろと清い泉とがあって村の人の渇仰かつごうを集め、それに養われたと言われる無筆の歌人、漁夫磯丸いそまるの旧宅と石のほこらとは、ちょうど私の本を読む窓と相対あいたいしていた。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)