御眼おんめ)” の例文
槻の木の茂りから外れた時、月光が盲人に降りかかり、痩せた身長たけの高いその躰を、宮家の御眼おんめに強く印した。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
俊寛様はこうおっしゃると、たちまちまた御眼おんめのどこかに、陽気な御気色みけしきひらめきました。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あはれ良匠りやうしやうがなあれかしと、あまたある臣下等しんかどもえず御眼おんめそゝがれける。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今こそお許しなされましたぞ! ……怒りのまなこを見ひらかれ、猛々しくおわした宮様の御顔おんかおが、ご覧なされ、御眼おんめを閉じられ、一切の罪も悪業も、許すぞとばかりの慈悲円満の
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この涙の谷にうめき泣きて、御身おんみに願いをかけ奉る。……御身の憐みの御眼おんめをわれらにめぐらせ給え。……深く御柔軟ごじゅうなん、深く御哀憐、すぐれてうましくまします「びるぜん、さんたまりや」様——
黒衣聖母 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すずしき御眼おんめに暗涙あり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「日頃のように青く澄んだ御眼おんめ」は、悲しみも悦びも超越した、不思議な表情を湛えている。——これは、「ナザレの木匠もくしょうの子」の教を信じない、ヨセフの心にさえ異常な印象を与えた。
さまよえる猶太人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
宮家の御眼おんめを避けるようにするのも、御心みこころにかかってならなかった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「重々御察し下され度、それにつけてもいつぞや御許様おんもとさま御眼おんめにかかりし事など思いいだされ、あの頃はさぞかし御許様にも、——ああ、いや、いや。ほんとうに世の中はいやになってしまう。」
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)