御父おとっ)” の例文
「あの御父おとっさんの産んだ子だと思うと、厭になってしまう。東京へでも出ていなかったら、貴方あんたもやっぱりあんなでしょうか」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
丁度御前の御父おとっさんが法律家だもんだから、証拠さえなければ文句を付けられる因縁いんねんがないと考えているようなもので……
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あれの御父おとっさんも御出なすったし、幸い一緒に連れて帰って貰う積りで、わざわざ長野までも出掛けては見たが、さて御父さんの顔を見ると——ああいう好人物いいひとだからなア
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「あの時王子の御父おとっさんは、家へ帰って来るとお島は隅田川すみだがわへ流してしまったと云って御母おっかさんに話したと云うことは、お前も忘れちゃいないはずだ」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
あなたが御爺さん御婆さんだと思っていらっしゃる方は、本当はあなたの御父おとっさんと御母おっかさんなのですよ。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御父おとっさん、羽織を着えていらッしゃいよ」
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「じゃあの子に御父おとっッさんが何といったい。あの子の方に余計口を利くかい、御前の方にかい」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ふん、御父おとっさんや御母おっかさんに、私のことなんか解るものですか。彼奴あいつ等は寄ってたかって私を好いようにしようと思っているんだ」お島はぷりぷりしてつぶやきながら出ていった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「奥様、吾家うち御父おとっさんで御座ますよ」
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
墓はいつ頃出来たものかしかとは知らぬが、何でも浩さんの御父おとっさんが這入り、御爺おじいさんも這入り、そのまた御爺さんも這入ったとあるからけっして新らしい墓とは申されない。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
するとこれも江戸っ子である。御爺おじいさんも御爺さんの御父おとっさんも江戸っ子である。すると浩さんの一家は代々東京で暮らしたようであるがその実町人でもなければ幕臣でもない。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
女の方は何者だか分らないから、ず男の方から調べてかかる。浩さんは東京で生れたから東京っ子である。聞くところによれば浩さんの御父おとっさんも江戸で生れて江戸で死んだそうだ。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そりゃ、僕もうから、どうかする積りなんだけれども、今の所じゃ仕方がない。もう少し待ってくれたまえ。その代り君の兄さんや御父おとっさんの事も、こうして書かずにいるんだから」
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これはずっと後で聞いた話であるが、この喜いちゃんの御父おとっさんというのは、むかし銀座の役人か何かをしていた時、贋金にせがねを造ったとかいう嫌疑けんぎを受けて、入牢じゅうろうしたまま死んでしまったのだという。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御父おとっさんや御母おっかさんが生きて御出だったらさぞ御喜びだろう
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御父おとっさん、その杉の根の処だったね」
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御父おとっさん、重いかい」と聞いた。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御父おとっさん。御客」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)