御断おことわ)” の例文
旧字:御斷
最初に一応御断おことわり申しておきたいことは、私は熱心においては何人なんぴとにも譲らざる俳諧の研究者、殊に芭蕉翁の、今の言葉でいうファンであるが
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それ以来私はあきらかに三浦の幽鬱な容子ようすかくしている秘密のにおいを感じ出しました。勿論その秘密の匀が、すぐむべき姦通かんつうの二字を私の心にきつけたのは、御断おことわりするまでもありますまい。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
貴方あなたらないに、縁談がれ程すゝんだのか、わたしにもわからないけれど、だれにしたつて、貴方あなたが、さう的確きつぱり御断おことわりなさらうとは思ひけないんですもの」と梅子はやうやくにして云つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
こゝにちょいと御断おことわり申して置きますのは、魔術と申しましたところで、世間普通の手品などゝは違って居りまして云わば、最新の学理に基き、廿世紀の心理学を応用いたしましたるところの
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)