御大おんたい)” の例文
サロンには、「会社のオッかない人、船長、監督、それにカムサツカで警備の任に当る駆逐艦の御大おんたい、水上警察の署長さん、海員組合の折鞄おりかばん
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
「君、君、井上君、橘会も好いが、お見受けしたところ、皆女房に頭の上らない連中ばかりだね。御大おんたいの君にしても、副将の香坂君こうさかくんにしても」
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
硯友社は御大おんたい紅葉を初めとし美妙といい漣といい美男のおそろいであったが、美貌をいったら川上眉山かわかみびざんは第一位であったろう。
建長寺にをつた時分、酒を続けてゐてくれた内田屋の御大おんたいに会ひ、では、おせいのお袋さんだけに会ひたいと思つたんだ。
椎の若葉 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
御大おんたいはあの通り苦しんでいる、我々はみな散々ちりぢりバラバラになっているのに、ツイぞ今まで、福はどうしているかと、お見舞にあずかったためしがない
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
炭鉱をいくつも持っとる大金持だ。……その右手のが、安川敬一郎氏、安川財閥の御大おんたい
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「吉ちゃんの云っているようなことが御大おんたいにきこえたら、とんだおしかりもんだろう」
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
まるで基督キリストが復活してきた時に磔柱はりつけになった後の疵口きずぐちへ手を突っ込ませてみせてくれなくちゃ、人違いだか何だかわかんねえと言い張った十二使徒の中のタマスみたいに、懐疑派の御大おんたいではある。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「そのうち、日光へ参詣を兼ねて、一緒に大中寺だいちゅうじ御大おんたいをたずねる約束をして来たから、近いうちここへやって来ると思う、やって来ましたら、どうぞお手柔らかに」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「それにはまたそれだけの理窟があって、あの当座は、あんまりいどころを人に知られたくなかったのさ。その点は喧嘩両成敗として、御大おんたいも実は苦しみ抜いている、一度、見舞に行ってくれないか」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)