御剣ぎょけん)” の例文
と、さいごの綸言りんげんを残され、そして左の御手に、法華経ノ第五巻を持ち、右の御手には御剣ぎょけんを抱いて、おかくれになったとしている。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平大納言の声がかかったが、何しろ、ごたごた騒ぎの最中で忘れる物も多く、そのとき御座所にあった御剣ぎょけんなども忘れた物の一つであった。
後には上奏の手続きを執った。井伊大老ですらそのとおりだ。薩長二藩の有志らはいずれも争って京都に入り、あるいは藩主の密書をいたしたり、あるいは御剣ぎょけんを奉献したりした。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかし帝は、御剣ぎょけんを譲られただけで、(印)はお離しにならなかった。あるいは偽物の璽を渡されたとも後世ではいっている。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
法皇はこの吉兆をきいてお喜びになり、御剣ぎょけんを始め種々の神宝を、住吉の大明神へおさめられることになった。
何れも平紋ひょうもん狩衣かりぎぬに帯剣、お経の施物、御剣ぎょけん御衣ぎょいを捧げ持ち、次々に東のたいより南庭を渡り、西の中門へ静かに出て行くさまは、まことに壮厳で美しかった。
いっぱいな涙を眸に、廉子はみかどの後ろへ、なよらかな直衣のうしをお着せ申したり、御剣ぎょけんを取ってささげたり、また女心に気づかれる物、何くれとなくお身に添えて
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
刀のぬぐいやとぎをいたして、禁裡きんり御剣ぎょけんまで承っておりまするが——常々師の光悦が申すことには——由来、日本の刀は、人を斬り、人を害すために鍛えられてあるのではない。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)