徒歩ひろ)” の例文
だんまりで夜道を徒歩ひろうてえなア気がきかねえ。一つ、色懺悔ざんげをなさいまし、色懺悔を……豆太郎、謹んでお聞きしますよ、エヘヘヘヘ
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
もとも、稀れに侍女おんなどもを連れて、ちとそこらを徒歩ひろうてみたがよい。……秋草のさかり、昼の月にすだく虫の音、安倍川あべがわは今がよい季節
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この石塊いしころの多い歩き難い道を彼様あゝして徒歩ひろつてもいゝのかしらん、と丑松はそれを案じつゞけて、時々蓮太郎を待合せては、一緒に遅く歩くやうに為たが
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
よく妾の家へは、旅のお武家様がお立ち寄りでございます。父が大変喜びますので。でも、家は一里ほど離れておりますので、お徒歩ひろいではお困りでございましょう。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
声高に話し合いながら三々伍々、金剛神院お庭の小径を徒歩ひろって、先に立った法勝寺三郎がとある繁みのまえへさしかかった時だった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「すこし浜を徒歩ひろってみたい。土用のような猛暑だが、この夕凪ゆうなぎの一ときで、あとは晩の涼風になろう。なにせい、やりきれん」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おそれ入りました。その吉野様は先程から、そこでお待ちうけでございます。どうぞ、あれまでお徒歩ひろいを」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ると着流しに雪駄履せったばき、ちぐはぐの大小を落し差しにした諏訪栄三郎、すっきりとした肩にさんさんたる陽あしを浴びて大股に雷門のほうへと徒歩ひろってゆく。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「折角、お徒歩ひろいをおすすめしましても、この通り淋しい宿場、御見物なさる所もございませんが、河原あたりで御一献も、たまには御気分が変ろうかと存じまして」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あまり屋の内にばかり籠っていては、お体にようございませぬ。裏山からわしの牧場の近くまで、お徒歩ひろいなさいませ。お気がはれまする。萱がご案内いたしますで」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「毎日、朝めし前には、こうして海辺をお徒歩ひろいかね。養生にはいちばんいいからな」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わしが帰りの遅いのを案じていてくれたの。ゆるせ、ゆるせ。ちときょうは御酒をいただき過したゆえ、わざと酔をまそうものと、湖畔を徒歩ひろうて戻って来たのじゃ。顔いろが青いとて案じるなよ。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『浮様、お徒歩ひろいなされますか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)