後添のちぞ)” の例文
母親のトミは新太郎が三歳の時病死し、ブウリーは後添のちぞいも貰わず、新太郎の養育に専念して、新太郎が二十一歳の折これも病歿した。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
後添のちぞいの牧の方は、当然、義理の仲の政子へ、わが子以上の親心をもってのぞもうと努めていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
色仕掛いろじかけで主人に取り入り、後には、そこの後添のちぞえとまでなおったが、近ごろうわさにきけば、その老夫もまた世を去って、ふたたび未亡人の身の上だというが……それやこれやで
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
『大清』の藤五郎さんのところへ後添のちぞいに行くつもりだから、きっぱりと縁を切ってくれと言いますと、吉兵衛は、しばらくわたしの顔を眺めていましたが、お前はどうせ島育ち
顎十郎捕物帳:18 永代経 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
私がずっと年下の後添のちぞいの妻であるだけに、それが一層あってよい筈でした。
扉の彼方へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と言って、金兵衛は後添のちぞいのお玉と共によろこび迎えた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
清盛の口から、不愍ふびんな女があるが、後添のちぞえにめとってやらぬかといわれ、六波羅殿の声がかりではあるし、自分が迎えてやれば、その不遇な女性も救われる事情にあるとの事に
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後添のちぞいもめとらず、二人の娘と水入らずの家庭を楽しんでいたのだが、その愛嬢の一人が、何物とも知れぬ殺人鬼の手中に奪い去られたかと思うと、流石さすがの川手氏も狼狽ろうばいしないではいられなかった。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「わしの娘じゃが、某所へ腰元にあがったまま、ズルズルベッタリに後添のちぞいに直ったのち、今日今夜までなんの音沙汰もなく——泰軒殿聞いてくだされ。このお美夜坊は、こいつが屋敷へあがる前にできた子供でござる」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかも、その人に嫁いだ、ぼくの母の姉は、もう故人となって、後添のちぞえの夫人が家庭にいるのである。そんな事も思わず、母に黙って、斎藤家を頼って行ったのは、無分別というものに極っている。