後圃こうほ)” の例文
遠くつらなれる高輪白金たかなわしろかねの高台には樹々のこずえすでにヤヽ黄を帯びて朝日に匂ひ、近く打ち続く後圃こうほの松林にはだ虫の声々残りてながら夜の宿ともひつべし
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
あんな風に茄子をもいでおる、如何いかに楽しいことであろうか、一家の主婦として後圃こうほの茄子をもぐということに、妻としての安心、誇り、というものがある、とそう感じたのである。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
篠田はいつもの如く早く起き出でて、一大象牙盤ざうげばんとも見るべき後圃こうほの雪、いと惜しげに下駄をいんしつゝ逍遙せうえうす、日の光ははるか地平線下にいこひぬれど、夜の神がし成せる清新の空気は
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
後圃こうほの初茄子をとって霊前に供えよう、とこういう意味で、人の年忌をもってきたところに、一度死に臨んだ自分のかく世に生きてあることの上に格別の深い感情を動かすのであります。
俳句の作りよう (新字新仮名) / 高浜虚子(著)