弓手ゆんで)” の例文
左へ立ったり、左へ回っていたら、左手と書いて弓手ゆんでと読ませるくらいです。避けるひま、防ぐひまもないうちに射放たれるのです。
第四行めの『ゆんでゆんで』は、これもむかしのことばで、弓手ゆんで弓手と書くのです。弓をもつほうの手、すなわち左手の意味です。
怪奇四十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
忠利は眼もくれないで、もう次の矢をつるに懸け、足をふみ開いて、弓手ゆんでを眉の上にかざしていた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弓手ゆんでの方に眼に入るものは、薄暮の天を斜に匍匐する大蜘蛛のやうに、薄暗い空の下、葉の無い森の上を動いて、いかにも清い光に濕つて、水の上に長く影を曳いてゐる太白星である。
椰子の樹 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
太郎太刀を「薙刀なぎなたの如く」ふりかざし、馬手めて弓手ゆんで当るを幸いに薙ぎ伏せ斬り伏せ、たてざま横ざま、十文字に馳通はせとおり、向う者のかぶとの真向、よろいの袖、微塵になれやと斬って廻れば、流石さすがの徳川勢も
姉川合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)