弁疏いひわけ)” の例文
旧字:辯疏
『怎うもしないのに!』と自分に弁疏いひわけして見る傍から、「屹度加藤さんでお午餐ひるが出て、それから被来いらつしやる。」といふ考へが浮ぶ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
もしかこの人が弁疏いひわけがましい隠し立などしないで、あけすけに、公然おほぴらに今度の戦争の事情いきさつを懺悔したら、どんなにか面白い書物が出来るだらう。
したが、いつたん顔を出したからには、泣いても笑つても一通りの弁疏いひわけはしておかずばなるまいて。
何有なあに!』とお由は又言つた。そして、先刻さつきから三度目の同じ弁疏いひわけを、同じ様な詰らな相な口調で付加へた、『晩方に庭の台木どぎ打倒ぶんのめつてつたつけア、腰ア痛くてせえ。』
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
この頃京都図書館長を辞めて早稲田大学の図書館に転ずるとかいふ湯浅半月氏は、例の女買ひについてしきりと噂を立てられてゐるが、流石に口上手の男だけに、別に弁疏いひわけがましい事もせず
九時半頃、秋野教師が遅刻の弁疏いひわけい/\入つて来て、何時も其室そこの柱に懸けて置く黒繻子の袴を穿いた時は、後から/\と来た新入生も大方来尽して、職員室の中はいてゐた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
若い学生は弁疏いひわけがましくいつて、泣き出しさうな顔になつた。
『千早さん、先刻さつきいそがしい時で……』と諄々くどくど弁疏いひわけを言つて
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)