廻国かいこく)” の例文
その米の叔父に一人の僧侶そうりょがあったが、それが廻国かいこくに出かけることになって、僧侶には路銀ろぎんは不要だと云うので、三百円の金を米に預けて往った。
寄席の没落 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「あなたを捜していたのです」と玄一郎に向って云った、「……あのときから今日まであなたを探しながら廻国かいこくしていたのです、あなたを捜しながら」
山だち問答 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
最早楽しみもないから頭を剃って廻国かいこくするという置手紙を残して居なくなって仕舞い、諸道具も置形見にして行きましたと云って家主様おおやさんも大変心配して居た処へ
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
目的に歩いていたものであろう。まさかただの遊びや見物の廻国かいこくではあるまい
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
芸妓の罪障は、女郎の堅気も、女はおなじものと見えまして、一念発起、で、廻国かいこくの巡礼に出る。板橋から中仙道なかせんどう、わざと木曾の山路のさびしい中を辿たどって伊勢大和めぐり、四国まで遍路をする。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あります、あります。廻国かいこくの六部のような男が……」
半七捕物帳:19 お照の父 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
わしぁこれから廻国かいこくに出かける
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
五「いえ/\金はりません、わたくし剃髪ていはつして罪滅しの為に廻国かいこくします」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)