庚申かうしん)” の例文
庚申かうしん橋とかいふ橋の下に大小紅紫いろいろの友禪の半襟を綱に弔るして居たのが、如何にも春らしく京都らしく好い氣持であつた。
京阪聞見録 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
今まで押入られる先を警戒して、何時でも出し拔かれた平次は、その日は宵から庚申かうしん横町の外、駄菓子屋の店を借りて張り込むことにしたのです。
目的めあて海岸かいがん——某地ぼうちくと、うみ三方さんぱう——見晴みはらして、旅館りよくわん背後うしろやまがある。うへ庚申かうしんのほこらがあるとく。……町並まちなみ、また漁村ぎよそん屋根やねを、隨處ずゐしよつゝんだ波状はじやう樹立こだちのたゝずまひ。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それから小舎こやに帰って寝ましたがね、いゝ晩なんです、すっかり晴れて庚申かうしんさんなども実にはっきり見えてるんです。あしたは霜がひどいぞ、砂利も悪くすると凍るぞって云ひながら、寝たんです。
化物丁場 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
刀の大小を並べたり、賽の目や、太鼓や、田植ゑ笠や、塔や、いろ/\のものを畫いて、庚申かうしんは何月何日、社日しやにちは何時、彼岸は何日と判じて讀ませるのです。
「知つてますよ親分、これは名題の庚申かうしん横町ぢやありませんか」