床几場しょうぎば)” の例文
まもなくその右馬介は、高氏のいる野外の床几場しょうぎばへみちびかれていた。高氏が彼と会うときはいつも人をそばにおかないのが例だった。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや言うやいな、そこの床几場しょうぎばを躍り出し、ほりの吊り橋を下ろさせて、部下百騎ほどの先を切って駆け出して行く彼だった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉は、山上の床几場しょうぎばから、ふと、不審な一軍が野中にかたまり合ったまま、さっきからじっと動かずにあるのを認めて
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしても西に傾く頃、秀吉はここから三番貝を吹かせ、自身の床几場しょうぎばを城外へすすめて、海道口の印南野いなみのに移した。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてやがて仮城とも見える本丸小屋と無数の陣幕が山上にひらかれ、中央に馬簾ばれん旌旗せいきなどの簇立ぞくりつしている所こそ問わずして、佐久間玄蕃允げんばのじょう床几場しょうぎばと知られる。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉は、夕刻、足羽山あすわやまの本陣を、さらにすすめて、市街の一端、九頭龍川くずりゅうがわをうしろに、床几場しょうぎばをさだめ
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄のいる床几場しょうぎばへ戻って、身躾みだしなみをつくろい、兄の半兵衛も、具足をって、涼やかな平服に着かえるのを待ち——それから間もなく、ふたたび陣所を出て行った。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時、床几場しょうぎばのあるすぐ後ろの丘から、誰やら降りて来た。佐々木巌流であった。待ちしびれていた巌流は、小高い山に上って、独り腰かけていたものとみえる。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
坂上にある彼の床几場しょうぎばは、燃えさかる町屋の煙のため、すぐ下の戦況すら透視とうしできなかった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、これへ馬をとばして来て、床几場しょうぎばで義貞と会っていたのは、陽もやや西のころだった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
た、見とおしのもとに、彼はこの魚見堂へ、本営をすすめていた。——逆瀬川さかせがわと湊川の口が大きく海へくびれをし、附近の低い砂丘や小松ばらが、彼の床几場しょうぎばをかこっている。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼処かしこを二本松と呼ぶか。……あのあたりに燦々さんさんと見ゆる大軍こそ彼の床几場しょうぎば
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのとばりを挟んで、少し先の土坡どばの向う側には、長岡佐渡の床几場しょうぎばがあった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すこし身伸びをすれば、そこからでも信長の床几場しょうぎばがよく見えた。信長の高い声すら風の加減では聞えてくる。今、彼の前には、佐々隼人正さっさはやとのしょう政次が、何やら、命をうけているらしくを下げていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼方の床几場しょうぎばのほうで、そうした声が、さっと流れた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
祝彪は大勢のいる荘の床几場しょうぎばへ来るなり言った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)