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幾旒
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いくりゅう
彼の旗さし物には、まだ何の
印もなかった。無地の赤旗が、
幾旒か兵馬のあいだに立って、犬千代の
茫然たる眼の前を流れて行った。
広重は
顔見世乗込の雑沓、茶屋
飾付の壮観を
外にして、待乳山の老樹
鬱々たる間より唯
幾旒となき
幟の貧しき
鱗葺の屋根の上に
飜るさまを以て足れりとなし、また
芝居木戸前の光景を示すには
さらに、二つの江の口を過ぎると、やがて
金沙灘の岸には、
幾旒もの旗と人列が見えた。頭領の
王倫以下、
寨中の群星が、
関を出て、立ち迎えていたものだった。
ただ一色の源氏の白旗につづいて、千葉家の
月輪の紋じるしも
幾旒か
翻っていた。