幽艶ゆうえん)” の例文
旧字:幽艷
ナオミがメリー・ピクフォードで、ヤンキー・ガールであるとするなら、此方はどうしても伊太利イタリア仏蘭西フランスあたりの、しとやかなうちにほのかなるびをたたえた幽艶ゆうえんな美人です。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あ、この幽艶ゆうえん清雅な境へ、すさまじい闖入者ちんにゅうしゃ! と見ると、ぬめりとした長い面が、およそ一尺ばかり、左右へ、いぶりを振って、ひゅっひゅっと水をさばいて、真横に私たちの方へ切って来る。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鈴のような声で家娘がしずかにこうさえぎった、まことに玲瓏れいろう玉のごとく、清高せいこうにして幽艶ゆうえんなる声だ、父親はぴったりと黙ったし、客たちは粛然とひざを正し敬恭のあまり畳へ手を突いた者さえある
まことに幽艶ゆうえんな婦人である。
厨房日記 (新字新仮名) / 横光利一(著)