幼少おさな)” の例文
これは家内が幼少おさない時分に、南部地方から来た下女とやらに習った節で、それを自分の娘に教えたのである。お房が得意の歌である。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
……わたくし幼少おさない時より両親ふたおやに死に別れまして、親身しんみの親孝行も致しようのない身の上とて、この上はただ御楼主様ごないしょさまの御養育の御恩を、一心にお返しするよりほかに道はないと
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
これはお雪が幼少おさない時分に、南部地方から来た下女とやらに習った節で、それを自分の娘に教えたのである。お房が得意の歌である。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「母親のない幼少おさない子供を控えながら遠い国へ行くというお前の旅の噂は信じられなかった。お前は気でも狂ったのかと思った。それではいよいよ真実ほんとうか」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
極く幼少おさない時の記憶が彼の胸に浮んで来た。彼は自分もまた髪を長くし、手造りにしたわらの草履を穿いていたような田舎の少年であったことを思出した。河へすくいに行ったかじかを思出した。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お種がここへかたづいて来た頃は、三吉も郷里の方に居て、まだ極く幼少おさなかった。その頃は両親とも生きていて、老祖母おばあさんまでも壮健たっしゃで、古い大きな生家さと建築物たてものが焼けずに形を存していた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)