年越としこし)” の例文
大歳おおとしまたは十四日の年越としこしばんに、家々の門に来てこれを振りまわし、ダシヤレダシヤレ、またはハーラメダーセ、すなわち孕み女を出せとわめくのである。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この老人は遠く国から出掛けて、三吉の家で年越としこしした母と一緒に成りに来た。それほど長く母も逗留とうりゅうしていた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この宝の船は種々くさぐさの宝を船に積たる処をかき回文かいぶんの歌を書添へ元日か二日の夜しき寐してしき夢は川へ流す呪事まじないごとなりとぞ、また年越としこしの夜もしくことある故に冬季ともいひたり
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
歳越としこしの日などはいづれの家にてもことさらに雪をほりまどのあかりをとり、ほりたる雪も年越としこしの事しげきにまぎれて取除とりのけをはらず、掘揚ほりあげ屋上やねにひとしき雪道歩行あゆむにたよりあしき所もあり。
新らしい今年藁ことしわらをもって念入りに俵を編み、それに次の苗代なわしろ種籾たねもみを入れて、年越としこしにはそれをとこの前、神棚の下、または大黒柱の根もととか、臼柱うすばしらの片脇の臼の上とかに積み上げて
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)