巌端いわばな)” の例文
旧字:巖端
おもて長く髪の白きが、草色の針目衣はりめぎぬに、朽葉色くちばいろ裁着たッつけ穿いて、草鞋わらんじ爪反つまぞりや、巌端いわばなにちょこなんと平胡坐ひらあぐらかいてぞいたりける。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
のう、便船びんせんしょう、便船しょう、と船をなぎさへ引寄せては、巌端いわばなから、松の下から、飜然々々ひらりひらりと乗りましたのは、魔がさしたのでござりましたよ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうだ伝九、この、お関所あとを見るにつけ、ぼけた金時じゃあるめえし、箱根山を背後うしろ背負しょって、伊豆の海へ巌端いわばなから、ひょぐるばかりが能じゃあるめえ。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
船の中でも人目をいとって、紺がすりのその単衣ひとえで、肩から深く包んでいる。浦子の蹴出けだしは海の色、巌端いわばな蒼澄あおずみて、白脛しらはぎも水に透くよう、倒れた風情に休らえる。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
波が寄せて、あたかも風鈴が砕けた形に、ばらばらとその巌端いわばなうちかかる。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)