山媛やまひめ)” の例文
はじめ、私はこの一篇を、山媛やまひめ、また山姫、いずれかにしようと思った。あえて奇を好む次第ではない。また強いて怪談がるつもりでもない。
殊にこの若い女は、きらびやかな頸珠くびだまや剣を飾っているだけに、余計人間離れのした、山媛やまひめのような気がするのであった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
帰ッて来ぬにチョッピリこの男の小伝をと言うきところなれども、何者の子でどんな教育をけどんな境界きょうがいを渡ッて来た事か、過去ッた事は山媛やまひめかすみこもッておぼろおぼろ、トント判らぬ事而已のみ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
むすび髪の色白な若い娘は、見ると活けるその熊の背に、片膝して腰を掛けた、しき山媛やまひめ風情ふぜいがあった。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)