小雀こすずめ)” の例文
あのツルゲネーフの書いた「勇敢なる小雀こすずめ」という短篇があります。そのなかにこんな涙ぐましい話が書いてあります。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
珠運様も珠運様、余りにすげなき御言葉、小児こどもとっ小雀こすずめを放してった位に辰を思わるゝか知らねどと泣きしが、貴下あなたはそれより黙言だんまりで亀屋を御立おたちなされしに
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「六年まで! いや、君は実にかわいい小雀こすずめさんだ! 髪をきちんと分けて、指輪なんかいっぱいはめて——金持は違ったものだ! へっ、なんと愛すべき少年なるかなだ!」
日常かたわらにある人の、片っぽの目が一分間見ていたよりも、知らなすぎるくらいなもので、毎朝彼女の目覚めざめ軒端のきばにとまる小雀こすずめのほうが、よっぽど起居を知っているともいえる。
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
……そのためには、つめと大きな翼と力強い心とが必要だ。しかし君らは小雀こすずめにすぎない。
一睨ひとにらみすれば、わしにつかまれた、小雀こすずめではないか? おどしに掛けさえすれば、どんな言葉でも、拙者のいうことなら、受け容れる外にあるまい——さもなくば、恋も、夢もそれまで
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
パリーの民衆は、たとい大人おとなに生長しても、常に浮浪少年ガマンである。その少年を描くことは、その都市を描くことである。わしをその磊落らいらくなる小雀こすずめのうちにわれわれが研究したのは、このゆえである。
まことに敬畏けいいする態度で、私は、この手紙一本きりで、あなたから逃げ出す。めくら蜘蛛ぐも、願わくば、小雀こすずめに対して、寛大であられんことを。勿論お作は、誰よりも熱心に愛読します心算つもり、もう一言。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)