小櫛おぐし)” の例文
黄楊つげ小櫛おぐしという単語さえもがわれわれの情緒じょうしょを動かすにどれだけ強い力があるか。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「夜ははやあけたよ。忍藻はとくに起きつろうに、まだ声をもださぬは」いぶかりながら床をはなれて忍藻の母は身繕いし、手早く口をそそいて顔をあらい、黄楊つげ小櫛おぐしでしばらく髪をくしけずり
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
その心から彼はあの『たま小櫛おぐし』を書いた翁を想像し、歴代の歌集に多い恋歌、または好色のことを書いた伊勢いせ、源氏などの物語に対する翁が読みの深さを想像し、その古代探求の深さをも想像して
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
黄楊つげの——黄楊の小櫛おぐし
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黄楊つげ小櫛おぐし
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
刎返はねかえした重い夜具へ背をよせかけるように、そして立膝たてひざした長襦袢ながじゅばんの膝の上か、あるいはまた船底枕ふなぞこまくらの横腹に懐中鏡を立掛けて、かかる場合に用意する黄楊つげ小櫛おぐしを取って先ず二、三度
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)