小夜時雨さよしぐれ)” の例文
しかし胸に手を置いて寝た結果、苦しくなって目が覚めたことはたしかである。目を覚して気がつくと、小夜時雨さよしぐれひさしに寂しい音を立てている。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
小夜時雨さよしぐれ、それはいつの間にか通り過ぎて、薄い月が夢のように鴨川の水を照らしていた。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
着流きながしと来て、たもとへ入れた、例の菓子さ、紫蘇入しそいり塩竈しおがま両提ふたつさげの煙草入と一所にぶらぶら、皀莢さいかちの実で風に驚く……端銭はしたもない、お葬式とむらいで無常は感じる、ここが隅田おおかわで、小夜時雨さよしぐれ
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
東国の平野ならばあられひょうかと思うような、大きな音を立てて降る。これならばまさしく小夜時雨さよしぐれだ。夢驚かすと歌に詠んでもよし、降りみ降らずみ定めなきといっても風情がある。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)