射返いかえ)” の例文
食卓は約束通り座敷のえん近くに据えられてあった。模様の織り出された厚いのりこわ卓布テーブルクロースが美しくかつ清らかに電燈の光を射返いかえしていた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ここに射返いかえされたようなおきみの色。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
高い日があおい所を目の届くかぎり照らした。余はその射返いかえしの大地にあまねき内にしんとしてひとぬくもった。そうして眼の前に群がる無数の赤蜻蛉あかとんぼを見た。そうして日記に書いた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ことに汽車が海岸近くを走るときは、松の緑と海のあいとで、煙に疲れた眼にさわやかな青色を射返いかえした。木蔭こかげから出たり隠れたりする屋根瓦の積み方も東京地方のものには珍らしかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)