寺院てら)” の例文
それを焼払おうとして、ある日寺院てらの障子に火を放った。親孝行と言われた実も、そこでよんどころなく観念した。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
門衛あわただしく遮って、「こらこら、ここは寺院てらじゃないぞ。今日葬式とむらいのあるなあ一町ばかり西の方だ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
坊主なんてひどいことをするぜ、尤も俺達も亂暴にや違ひないが、去年よ小石川の寺院てらでよ、初さんところの葬式の來るのが遲れたのでな、さきへ行つてゐた者が、一盃いつぺいやり始めたのよ
佃のわたし (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
反対の側は寺院てら通りに面し、いうところのうなぎ寝所ねどこのような、南北に長い空地であって、北のはずれには一ツ目橋があって、渡れば相生町や尾上河岸へ出られ、南のはずれを少し行けば
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
話はここで途切れて、どこかの寺院てらの鐘が鳴る。
まあ、蓮華寺では非常にほしがるし、奥様も子は無し、それに他の土地とは違つて寺院てらを第一とする飯山ではあり、するところからして、お志保を手放して遣つたやうな訳さ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
剣だの巻軸だの寺院てらだのの形で、充たされているのが異様であった。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それからは家続きで、ちょうどお町の、あのうち背後うしろに当る、が、その間に寺院てらのその墓地がある。突切つッきれば近いが、けて来れば雷神坂の上まで、土塀を一廻りして、藪畳やぶだたみの前を抜ける事になる。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『長野の寺院てらに居る妹のところへりたいのですがね、』と奥様は少許すこし言淀いひよどんで
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
寺院てらでも本堂を貸しますし、演説をるといへば人が聴きにも出掛けます。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)