寝惚ねぼけ)” の例文
旧字:寢惚
寝惚ねぼけ先生こと、太田蜀山人おおたしょくさんじんのところへ出入して、下手な狂句なども作る。恍けたところがあって、多少の可愛気はある男。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「世の中に蚊ほどうるさきものはなし、文武と言いて夜も眠られず、さすがに寝惚ねぼけ先生、うまいところを言ったな。どこかにまだ蚊帳かやがあるだろう」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
どんなに堅いお方でも其処そこ男女なんにょ情合じょうあいで、毛もくじゃらの男でも、寝惚ねぼければすべっこい手足などが肌に触れゝば気の変るもの、なれども山之助お繼は互に大事を祈る者
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さっと朝風が吹通ると、山査子さんざしがざわって、寝惚ねぼけた鳥が一羽飛出した。もう星も見えぬ。
蜀山人始め寝惚ねぼけ先生と号して狂詩集を梓行しこうせしは明和四年十九歳の時にしてその先輩平秩東作平賀鳩渓ひらがきゅうけいらと始めて相知れり。さればこの時既に狂詩と共に狂歌の吟咏ありしや明かなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
寝惚ねぼけがほなる笑止せうしさに
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
此方こっちも一生懸命ですがね、只煩って看病するばかりならいゝけれども、何うも夜中に胸倉を取って、いやな顔で変な事を云うには困ります、私は寝惚ねぼけ度々たび/\びっくりしますから、誠に済まないがね
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かぢ「この老爺さんは何うしたんだ、寝惚ねぼけたのかえ」