むじつ)” の例文
しかも彼女はそのむじつを訴えることさえできず、黙って住民たちに嘲笑され、悪童どもの投げつける石に耐えなければならないのである。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
飽まで欺く長庵は眞面まがほに成り是は新しき仰せ哉成程忠兵衞が妻富と密通を仕つりしと申上しは私し此度むじつ難題なんだい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「それだけ解つて居るなら、どうしてむじつの世之次郎を縛つて、眞實ほんたう下手人げしゆにんを逃して置いたのだ」
げんに俺の母親おふくろなどはむじつとがで殺された。之が綱吉公の御代なら直ぐかたきを取つて貰へたのだ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
然し考えてみると自分のむじつを言い説く道はたった一つある。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
仕直しなほして夫さへきかして下さらば如何なる事でも貴方あなた次第しだいと聞て忠兵衞夢中むちうになりお前のをつと道十郎殿にむじつなん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
継母のお嘉代はひたむきに倅の文次郎のむじつを訴えるのです。
見られ依て一事が萬事なり十兵衞を殺害せつがいせしも其方がわざ相違さうゐあるまじ然るを道十郎にむじつの罪を負せ公儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)