宿許やどもと)” の例文
めいめいの宿許やどもとへ引き揚げて、やれよかったと初めて落ちつくと共に、どの人の口にのぼったのもかの奇怪な人間の噂であった。
半七捕物帳:32 海坊主 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
手前は御当家のお奥に勤めているりよの宿許やどもとから参りました。母親が霍乱かくらん夜明よあけまで持つまいと申すことでござります。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
大木戸の御前の御病気には、何かその、婦人が一切禁物だと申すことで、小間使が二人、先日宿許やどもとへ下げられました。御台様みだいさまも一間なる処に御籠おこもりの様子。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それと同時に、与市の家へは庄兵衛の使が来て、左様な不埒ふらち者の宿許やどもとへお冬を預けておくことは出来ぬというので、迎いの乗物にお冬を乗せて帰った。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
けさほど宿許やどもとから徳蔵がまいりまして、仏の遺言というのをたてに取って、どうも面倒なことを申します
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大番屋おおばんやへ送られて三人は更に役人の吟味を受けた後に、新次郎は重罪であるからすぐに伝馬町てんまちょうの牢屋へ送られた。お直は宿許やどもとへあずけられ、宇吉は主人方へ預けられた。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
昨年の夏頃から宿に奉公して居りましたお北という若い女中がぬしの定まらないたねを宿して、だんだん起居たちいも大儀になって来たので、この七月に暇を取って新宿の宿許やどもとへ帰って
半七捕物帳:17 三河万歳 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
酒肴の饗応にあずかっては相成らぬというおきてにはなっているが、詰所にあてられている宿許やどもとから折りおりの饗応を受けるのは、ほとんど年々の例になっているので、誰も怪しむ者もなかった。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)