家憲かけん)” の例文
「されば、名残の宴でもある。藩祖はんそが阿波の国を賜うて以来、上府じょうふ帰国の船中では、太守を初め水夫楫主かこかんどり、一滴の酒をねぶることもゆるさぬ家憲かけんでござりますゆえ」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雲井に近きあたりまで出入することの出来る立身出世——たま輿こしの風潮にさそわれて、家憲かけん厳しかった家までが、下々しもじもでは一種の見得みえのようにそうした家業柄の者を
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
要するに、双方そうほう全く同じ註文です。そこで私達は何事があっても夫婦同時に憤らないという家憲かけんこしらえました。これを今日に至るまで忠実に守っています。独り相撲は取れません。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
家憲かけんは絶対である。元春もこれには口をつぐむほかなかった。また輝元も家の遺訓に照らして
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
などのなかで、武家家族として共々にその家憲かけん作法さほう規矩のりにしばられていなければならなかったこの長い月日が、口にもいえぬ気苦労であったり、情けなさであったらしい。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当時の座右銘ともいえる——家憲かけん、武士道訓、或いは、壁書かべがき——などというものが大いに行われ始めて、その道義的風興は、戦国期に入って、いよいよみがかれきそわれているのであった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)