宝物はうもつ)” の例文
旧字:寶物
木で造つた渡船わたしぶねと年老いた船頭とは現在ならびに将来の東京に対して最も尊い骨董こつとうの一つである。古樹と寺院と城壁と同じく飽くまで保存せしむべき都市の宝物はうもつである。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それから二人ふたり庫裡くりへ行つて、住職の坊さんに宝物はうもつを見せて貰つた。その中に一つ、銀の桔梗ききやうきんすすきとが入り乱れた上に美しい手蹟しゆせきで歌を書いた、八寸四方くらゐの小さなぢくがある。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
仏法僧鳥ぶつぽふそうを聞かうともせず、宝物はうもつも見ず、大門の砂のところからのびあがつて、奥深い幾重の山のはるか向うに淡路島あはぢしまよこたふのも見ようともせず、あの大名の墓石ぼせきのごたごたした処を通り
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
『さあ、みんなお金も宝物はうもつも出してしまへ。』
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
ひざうへへわがねて宝物はうもつ守護しゆごするやうぢや。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)