嬰児やや)” の例文
旧字:嬰兒
「ここだけは、いつまでも、平和な山里でありますように。そして、よい嬰児ややが生れたら、お夫婦ふたりして河内へ見せに来てください」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだ海のものとも山のものとも分りませぬが、もしお肚の嬰児ややが無事に生れましたら、立派にあなたの跡目あとめを立たせます。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
嬰児ややててなし児になろうぞ。早う行けっ」
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
「いま帰ったよ。……さぞ心細かったであろう。嬰児ややはあれきり眼をさまさなかったか。……待て待て、さっそく、葛粉くずこ湯掻ゆがいてやるからの」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よい嬰児ややを生みなさい。よい母になっておくれ……。そうしてくれれば、五百之進殿へ、わしは心の責めが幾分かすむ
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「きょうは、死んだ嬰児ややの日でござりますで、供養に餅をすこしばかりこしらえましたで、召し上がってくださいませや」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
玉日の前は、もう、前の年から妊娠みごもっていて、彼女のへやには、いつのまにか、珠のような嬰児ややの泣き声がしていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この嬰児ややこそ、西方弥陀如来さいほうみだにょらいのご化身けしんぞとおもうて、よくよくいつくしまれたがよい——と、母体の君の枕べを、数珠じゅずをもんで伏し拝んで去ったということ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『どうして、追い返せよう。——飽きも飽かれもせぬ妻を捨て、生れたばかりの嬰児ややも残して、此家ここへ戻りたいという環の心を、そなたは何うしてんでやらぬのじゃ』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
樺山かばやま中佐どのが、すぐ陣地へ行って、お知らせ申しあげたそうです。……やがて、あの方面の賊軍が退却すれば、きっとすぐに、嬰児ややのお顔を見に飛んでいらっしゃるに違いありません」
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とき交代していてやるから、生れた嬰児ややの顔を、ちょっと一目、見て来ないかと、おすすめになられたところが、ばかを云い給えと、反対にひどく叱られたと、仰っしゃっておいでになりました。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「またそろそろ腹をすかして、嬰児ややが乳をせがみ出す頃……」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おお、嬰児ややの泣き声がする」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嬰児ややの死か」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)