妻沼めぬま)” の例文
父の商売の得意先もこのごろでは熊谷くまがや妻沼めぬま方面よりむしろ加須かぞ大越おおごえ古河こがに多くなった。離れていて、土曜日に来るのを待つのもつらい。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
二人はなお一気には山かげに遠ざかり兼ね、太田の町外れからバスがあるのを幸い、下野の平野を山の遠輪に沿うて横へ利根川べりの妻沼めぬまの聖天まで走らせました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
埼玉県の妻沼めぬま辺ではホシンカン、岩手県ではコウセンクヮあるいはコセンコというのはあきらかに片言であるが、秋田県の各地でエングヮンコまたはエングヮ、山形県に行くと荘内でも最上もがみ郡でも
妻沼めぬま聖天様しょうてんさまであろう、そこに若干のお賽銭さいせんを投じて、最も多くのお釣を取りたい、些少さしょうの礼拝を以て、最大の健康と利福とを授かりたい、その釣銭信仰を軽蔑してはいけない、その人情の弱点と
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
妻沼めぬまの聖天から取って返し、今度は反対の渡良瀬川を越して、足利町に泊りました。機織たちの市日が賑って女の眼につく縞柄が無雑作に車に投げ積まれています。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
汽車が停車場に着くごとに、行田地方と妻沼めぬま地方に行く乗合馬車がてんでに客を待ちうけて、町の広い大通りに喇叭らっぱの音をけたたましくみなぎらせてガラガラと通って行った。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)