女犯にょぼん)” の例文
念仏者は女犯にょぼんはばかるべからずと申す者もあるが、善導は眼をあげて女人を見るべからずと迄云われて居るに——ということ。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
破戒の罪におののきながらも煩悩の火の燃えさかるまま、終いには毒食わば皿までもと住職の眼を掠めては己が部屋へ引き入れ、女犯にょぼん地獄の恐しい快楽けらく
ふと、半生の苦行を女一人に代えてしもうてな、女犯にょぼんの罪に科せられ、むちの生傷を負って寺を追われましたのじゃ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
住持が女犯にょぼんでさらし物になってから、住むものもなく大破した、泰仁寺たいにんじという寺があるのを思い出したからだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
自分の女犯にょぼんその他の不行跡が残らず露顕するおそれがあるので、迷惑ながらともかくも隠まうことにして、お国の首は墓地の隅に埋めて置いたというわけです。
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「とんでもない。鉄心道人の教えでは、女犯にょぼんは何よりの禁物で、雌猫めすねこも側へは寄せない」
女犯にょぼんの罪ある大罪人を、わが許しもなく在家ざいけの者が勝手に取り計らうとは何ごとかッ」
わしがまずお手本じゃ、隠れてすることならとがめぬが、人に見つかったが最後、女犯にょぼんという、堕地獄だじごくという、破戒僧という、あらゆるむちに追いまわされる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるひは寺の僧に関係があつて、内所ないしょかくまはれてゐるか。おそらく二つに一つであらうと亭主は想像した。しかし寺僧じそうは老人で、女犯にょぼんの関係などありさうにも思はれない。
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
乳房を——いいえ、女である事を看破みやぶられましたが運のつき、——その場にいとしい念日様をくくしあげて、女犯にょぼんの罪を犯した法敵じゃ、大罪人じゃと、むごい御折檻ごせっかんをなさいますばかりか
「——では、僧正も人間の子なれば、女犯にょぼんあるも、恋をするも、当りまえじゃと、おもとはいうか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれは子分どもに云いつけて、その坊主の行状を探らせたが、円養は大酒呑みでこそあれ、女犯にょぼんの関係はないらしいとのことであった。女の幽霊の正体は容易に判らなかった。
半七捕物帳:27 化け銀杏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それに就いては半七も余り詳しい註釈を加えるのをはばかっているらしかったが、それから半年の後にその住職は女犯にょぼんの罪で寺社方の手に捕われたのを聴いて、お道は又ぞっとした。
半七捕物帳:01 お文の魂 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼も別に悪僧というのでは無かったが、いわゆる女犯にょぼんの破戒僧で、長袖ながそでの医者に化けて品川通いにうつつをぬかしていた。誰も考えることであるが、あの兜の小判があれば当分は豪遊をつづけられる。
半七捕物帳:65 夜叉神堂 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)