女寅めとら)” の例文
役割は家橘かきつの金助、八百蔵の権次で、ほかに芝翫、松助、高麗蔵こまぞう女寅めとら、四代目片岡市蔵などもそれぞれの役割を勤めていた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
女寅めとらの娘おきみ、美くまた気乗りありてよし。染五郎の金屋金五郎は、元と武家出と云ふ腹もあつて、相応にこなしたれど、菊之助の伝兵衛とはくらべものにならず。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
けて申上げまするが、これから立女役たておやまがすべて女寅めとらが煩ったという、優しい哀れな声で、ものを言うのでありまするが、春葉君だと名代のい処を五六枚、上手に使い分けまして
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
市川女寅めとらが本郷の春木座へ稽古に通う途中、湯島切通しの坂へ差しかかりし時、俄かに眩暈めまいを感じて人力車を降り、路ばたの西洋小間物屋へ転げ込みしに
明治演劇年表 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
仲国はむろん団十郎で、小督局こごうのつぼねが秀調、小女房冷泉れいぜいが新蔵、「高野物狂」では高師四郎たかしのしろうが団十郎、ちご龍若が女寅めとらであったが、取分けて仲国が優れてよかった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
俳優は団十郎を座頭ざがしらとして、その一門の権十郎、寿美蔵、新蔵、女寅めとらなどのほかに、坂東家橘かきつ、岩井松之助という顔触れで、その当時においては余り賑かな座組ではなかった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)