太政大臣だじょうだいじん)” の例文
ある年の秋の一夜だったが、西園寺さいおんじさき太政大臣だじょうだいじん実兼さねかねの末の姫が、とつぜん北山の邸から姿を消した事件など、ひところの騒ぎであった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
団十郎とか、海老蔵とかいう名前は、芝居の方では太政大臣だじょうだいじんだ、その人を得ざれば、その位を明けておくのが、その道の者の礼儀ではないか。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「はははは、法性寺入道前ほうしょうじのにゅうどうさき関白かんぱく太政大臣だじょうだいじんと言ったら腹を立ちやった、法性寺入道前の関白太政大臣様と来ている。」
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
百官をべ、万機を行ない、天下をはかもうする者、太政大臣だじょうだいじんの上に坐し、一ノ上とも、一ノ人とも、一ノ所とも申し上ぐる御身分、百せいの模範たるべきお方であるはずだ。
血ぬられた懐刀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
保元ほげん平治へいじの乱と、権力者の内紛に、おちょっかいを出しながら、自分の地歩は、着々と固めていって、さて皆が、気がついた時分には、従一位じゅういちい太政大臣だじょうだいじん平清盛という男が、でき上っていた。
もうしたほどのばからしさが、新富座開場式には、俳優の頭領市川団十郎をはじめ、尾上菊五郎、市川左団次から以下、劇場関係者一同、フロックコートで整列し、来賓には、三条太政大臣だじょうだいじんを筆頭に
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「平の清盛きよもりが、太政大臣だじょうだいじんとなったのを、古今の異例といわれたそうだが、清盛はまだ平氏の帝系ていけいをひいた者。……氏素姓うじすじょうもない、一匹夫いちひっぷとはちがう」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)