天津乙女あまつおとめ)” の例文
女星の額の玉はくれないの光を射、男星のは水色の光を放てり。天津乙女あまつおとめは恋のに酔いて力なく男星の肩にれり。
(新字新仮名) / 国木田独歩(著)
此はしからず、天津乙女あまつおとめの威厳と、場面の神聖をそこなつて、うやら華魁おいらんの道中じみたし、雨乞あまごいには行過ゆきすぎたもののやうだつた。が、何、降るものときまれば、雨具あまぐの用意をするのは賢い。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
手甲てっこう脚絆きゃはん、たすきがけで、頭に白い手ぬぐいをかぶった村嬢の売り子も、このウルトラモダーンな現代女性の横行する銀座で見ると、まるで星の世界から天降あまくだった天津乙女あまつおとめのように美しく見られた。
試験管 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
夢に天津乙女あまつおとめひたえくれないの星いただけるが現われて、言葉なく打ち招くままに誘われて丘にのぼれば、乙女は寄りそいて私語ささやくよう、君は恋を望みたもうか、はた自由を願いたもうかと問うに
(新字新仮名) / 国木田独歩(著)
女もし恋の光をその顔に受けて微笑ほほえむ時は花のごとく輝く天津乙女あまつおとめとも見ゆれど、かの恋の光をその背にして逃げ惑うさまは世にこれほど醜きものあらじと、貴嬢はいかが思いたもうや。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)